2025年はユネスコの定めた国際量子科学技術年であり、それを記念して、ドイツ物理学会と日本物理学会は、科学の歩みと責任を再確認する「未来への宣言」を発表し、ミュンスターで署名の式典を行いました。量子力学のような革新的な科学の発見は社会の基盤となり、今後も応用の拡大が期待されますが、一方で、過去には核兵器など破壊的目的にも利用されました。1955年、世界的な核戦争の危険が高まるなかで、ラッセル=アインシュタイン宣言は核戦争の脅威を 警告し、物理学者の倫理的責任を示しています。核兵器の影響や、気候変動など地球規模の課題の解決には、科学的知見と国際協力が不可欠です。科学者は科学的知見が政治外交に反映されるように社会との対話を継続的に行い、 知識を平和と福祉のために活用することが求められます。この宣言は、特に次世代の物理学者に対し、人類の存続に関わる課題への積極的な取り組みを促すとともに、世界の物理学会に連携と参加を呼びかけるものです。
署名式
2025年11月14日 ドイツ ミュンスター市庁舎において、ドイツ物理学会 Klaus Richter(クラウス・リヒター)会長、日本物理学会 宮下精二会長による共同宣言「未来への宣言」署名式が執り行われました。
• 歓迎の辞 – Tilman Fuchs(ティルマン・フックス) ミュンスター市市長
• 宣言にあたっての挨拶 – 宮下 精二 日本物理学会 会長
未来への宣言
共同宣言署名
署名者:Klaus Richter (第75代ドイツ物理学会 会長)、宮下精二(第81期日本物理学会 会長)




パネルディスカッション
署名式に引き続き、パネルディスカッション「世界的な激変期における科学者の役割と責任」が催されました。
基調講演
• 小沼 通二 慶應義塾大学 名誉教授/元 日本物理学会 会長
演題:「未来への宣言を受け取る私たち科学者の役割」
• Cornelia Denz(コーネリア・デンツ) ドイツ国立計量研究所 所長
• Michael Quante(ミヒャエル・クワァンテ) ミュンスター大学 副学長
その他パネリスト
• 橋本 幸士 京都大学 理学研究科 物理学専攻 教授
• Malte Göttsche(マルテ・ゲッチェ)フランクフルト平和研究所およびダルムシュタット工科大学 教授
司会:Prof. Götz Neuneck(ゲッツ・ノイネック)

Photo by Mihoko Nojiri
2025年11月13日プレスコンファレンス冒頭挨拶
2025年11月13日 「未来への宣言」署名式事前のプレスコンファレンスを開催しました。
出席者による挨拶文を掲載しました。
出席者
•Moderator: Michael Quante (ミヒャエル・クワァンテ)ミュンスター大学 副学長
• Klaus Richter (クラウス・リヒター) ドイツ物理学会会長
•Malte Göttsche (マルテ・ゲッチェ) フランクフルト平和研究所およびダルムシュタット工科大学 教授
宣誓文の起草にあたった6名のワーキンググループの一員。
宣言起草委員会について
2024年8月の日独両物理学会の会合において、2025年11月にミュンスターで開催される「国際量子科学技術年」関連行事に際し、両学会の連名による「未来への宣言」を準備するためのワーキンググループ(起草委員会)が設置されました。
起草委員会は、ドイツ側からGötz Neuneck、Karin Zach、Malte Götzsche、日本側から橋本幸士(京都大学)、稲葉肇(明治大学)、橋本省二(高エネルギー加速器研究機構)の6名により構成され、2024年10月から2025年1月にかけて4回の会合を重ね、宣言文案の検討と最終調整を行いました。起草委員会での議論においては、政治的立場に偏ることなく、物理学が人類社会に対して果たしうる建設的で平和的な役割を強調し、若い世代に向けた未来志向のメッセージとなるよう十分に配慮されました。ドイツと日本の国際的状況や文化観/物理観の違いから、非常に深い議論となりましたが、最終的に日独両物理学会の友好の印ともなる合意が形成され、宣言文が完成しました。
宣言文案は、2025年3月31日に日本物理学会第105回定時総会で報告及び説明され、理事会での確認作業を経て確定しました。ドイツ物理学会においては、2025年6月14日に承認されました。